昨年大みそかの「第72回NHK紅白歌合戦」の平均世帯視聴率は、午後9時から11時45分までの第2部が、史上最低となる34・3%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)だった。前年より6・0ポイント減で、過去最低だった2019年の37・3%を大きく下回った。紅白は若者向けのブランディングに成功したと言われていただけに、局内に衝撃が走った。
紅白の制作OBは「紅白が紅白でなくなった日」と嘆いた。合格点は40%とされていた。「ドラマの『半沢直樹』(最高視聴率42・2%)にも及ばない数字。これではもうお化け番組と呼ばれなくなる」と漏らした。番組内容は評価が高かったのに、なぜこれほど視聴率が悪かったのか。
その理由は3つ挙げられる。まずは、チャンネルを合わせてもらおうという努力を怠ったことだ。
紅白がお化け番組となった一つの要因は、本番まで時間をかけた壮大な「あおり」。その代表例であるリハーサル取材は今回、リハ会場で行われず、別会場でメディア向けにリハの様子が映像で公開された。ただ多くが非公開だった。同局関係者は「情報をシャットアウトしすぎた。視聴者が期待するようなメディアの発信が例年に比べ極端に少なくなってしまった」と明かす。
メディアを巧みに使い、情報合戦をさせることも少なかった。毎秋恒例となっている司会者の会見もなく、例年なら夏の終わりごろから本番まで続く“壮大な番組PR”の仕掛けがなかった。ファンの多い副音声もなく、民放関係者は「全体的にお祭り感がなかった」と指摘する。
2つ目は、若者向けへと思い切った決断をしたことで、高齢者の紅白離れに拍車がかかったことだ。50年連続出場中だった五木ひろし(73)を外した段階で、番組側は覚悟していたが、カバーすべく細川たかし(71)とさだまさし(69)を投入しても、話題づくりとして訴えかけることはできなかった。
一方で、若者向けの番組作りは一定の評価を得た。内容も好評だったが、NHK関係者は「新たなブランディングと、それに伴うクリエーティブは良かった。ただ、その産物となるプロダクトが及ばなかった。“この人が出るなら見たい”と思わせる魅力的なトップアーティストを完全につかみ取ることができなかった」と話す。
今回はライバルの日本テレビ「笑ってはいけない」シリーズが放送されず、視聴者が紅白に流れるという予測もあっただけに衝撃は大きい。民放の音楽特番に出ないようなトップアーティストを引き出せなかったことで視聴率を上乗せできず、PR不足と高齢者離れという視聴率を下げる要素ばかりが残ってしまったことで自滅を招いた。
《スマホやパソコン…視聴の多様化も要因》地上波の平均世帯視聴率が伸びなかった要因として、BS4KやNHKプラスなど多様な視聴形態の選択が可能になったことも要因とみられる。なかでも番組をスマートフォンやパソコンで同時視聴できるNHKプラスの影響は大きい。実際に当日は「NHKプラス」がツイッターのトレンドの上位に浮上することもあり、同サービスを使用していた視聴者が多かったことをうかがわせた。紅白の実施本部長を務めた杉山賢治氏も「今回も地上波のみならず、多彩な接し方で紅白を楽しんでいただいた」と見解を示した。
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2022-01-02 20:30:00Z
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