将棋の最年少5冠、藤井聡太棋聖(竜王・王位・叡王・王将=19)が永瀬拓矢王座(29)の挑戦を受ける、第93期ヒューリック杯棋聖戦5番勝負第1局(主催 産経新聞社、日本将棋連盟)が3日、兵庫県洲本市「ホテルニューアワジ」で行われ、1日で2回の千日手による指し直しの末、後手の永瀬が先勝した。
黒星スタートの藤井は、タイトル戦の連勝記録が「13」で止まり、羽生善治九段を抜き、歴代単独2位の達成はならなかった。第2局は15日、新潟市で行われる。
「若き天才」VS「軍曹」の開幕局は波乱の展開となった。午前9時から始まった対局は午後4時17分に同一局面が4回繰り返される千日手が成立し、無勝負となった。30分後に指し直し局が始まったが、本格的な戦いに入る前に再び千日手になった。
タイトル戦で1日に2回、千日手が成立するのは、02年の第15期竜王戦、羽生善治竜王(当時)-阿部隆七段(当時)戦以来、20年ぶり。異例の展開となった。2人は藤井が四段時代からVS(ブイエス=1対1の練習対局)を行う研究パートナーだが、タイトル戦での初対決。お互いの手の内は知り尽くしているだけに、ギリギリの“死闘”を繰り広げた。
2回目の指し直し局の戦型は1回目と同じ角換わり。両者とも研究の範囲内で指し手が早く、中盤戦の激戦の中盤戦に突入した。受けが得意で長期戦をいとわず、千日手が多いことで知られる永瀬。藤井は1日2回の千日手は初めて。2回の千日手で持ち時間は削られ、この日の「3局目」の持ち時間1時間を使い切り、1分将棋に。終盤、粘りを見せたが、最後まで的確な指し手を見せた永瀬が制した。
終局後、藤井は「(永瀬の78手目)7一飛と寄られるのがちょっと気づいていなかった手で、少し長考した。ちょっと苦しくしてしまったのかなと思います」と振り返った。
黒星スタートとなったが「全体として思わしい展開にできなかった。しっかり反省して次に臨めたらと思います」と話した。
大舞台で「軍曹」の“洗礼”を受けたが、2人の「死闘」は続く。
◆千日手(せんにちて) 両対局者がほかの手を指すという考えがなく、同じ手順を繰り返すこと。同一局面が4回現れると成立し、その勝負は無かったこととなり、先手後手を入れ替えての指し直しとなる。
千日手自体、珍しいのだが、「ダブル千日手」となると、きわめてまれだ。過去のタイトル戦で1回の対局につき2回も千日手が出た例は、棋聖戦と竜王戦である。
棋聖戦は、1994年(平6)1月7日の第63期5番勝負第3局、羽生善治棋聖対谷川浩司王将戦。10日後に改めて行った指し直し局は、谷川が制した。
直近で発生したのは、02年の第15期竜王戦7番勝負第1局、羽生竜王対阿部隆七段戦(肩書、段位はいずれも当時)。10月23日午前9時からの2日制で始まった対局は、24日午後4時48分に千日手が成立。指し直し局も同日午後9時51分に成立したが、再度の指し直し局は行わず、11月6日に改めて指し直して、羽生が勝っている。
2022-06-03 12:43:45Z
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