コロナ禍でさまざまな事業が影響をうけるなか、パソコンについては比較的順調に新製品が続々と発表・投入されている。例年、年末に発売される製品は、各社のフラグシップであることが多いが、2020年末はいつにも増して、期待がかかる製品が多く投入される見込みだ。
全方向で強化された第11世代Coreを搭載
ここで紹介した製品には共通する特徴がある。それは、第11世代Coreプロセッサ(コードネーム:Tigerlake)を採用している点だ。
Tigerlakeでは、Willow Coveと呼ばれる新規開発されたCPUコアを採用。キャッシュ階層が大きく変更され、L2キャッシュがCPUあたり512KBから1.25MBに、L3キャッシュがCPU全体で8MBから12MBへと増やされており、CPUの性能向上に大きく貢献している。
GPUやNPUも強化されている。
GPUは、Intelが新しく開発したXe(エックスイー)と呼ばれる、スーパーコンピュータやゲーミングパソコン向けにも応用可能なものへと進化。第11世代Coreに内蔵されているのはその低消費電力版(Xe-LP)で、第10世代Coreの内蔵GPUだった「Gen 11 GPU」と比較して、実行ユニットの数が1.5倍になっており、アーキテクチャの観点からも実行ユニットの増加という観点からも、性能の向上が期待できる。
NPUについては、第10世代でも搭載されていたGaussian & Neural Accelerator(以下、GNA)が強化されている。GNAは低消費電力でAIの処理を行なうアクセラレータで、おもに音声認識のような、長くCPUに負荷をかけるような処理を代替する。第11世代CoreではGNAが第2世代になり、処理能力がさらに向上している。
加えて、I/O周りも強化されている。PCI Express Gen 4への対応が加わり、より高速なSSDを利用できる。現行のPCI Express Gen 3のSSDも高速だが、じつは動画のエンコードなどの処理ではSSDがボトルネックとなることもある。より高速なSSDにより、ボトルネックが解消されることで、クリエイティブ系アプリケーションや、ゲーム、そしてOS自体のレスポンスも増す。
前述のとおり、Thunderbolt 4にも対応。Thunderbolt 4は、USB4の上位互換となるI/O技術で、第11世代CoreはUSB4にも標準で対応している。
こうした第11世代Coreの新しい技術を支えているのが製造技術で、第11世代Coreは、Intel 10nmとして第2世代の製造技術となる10nm SuperFinで製造される。10nm SuperFinでは、同じ10nmでも前世代から18%程度性能が向上。同じ動作周波数であれば第10世代Coreよりも消費電力を低くすることが可能だ。
AAAタイトルが内蔵GPUだけの薄型ノートパソコンでプレイできるようになる
このように全面的に強化された第11世代Coreだが、ユーザーはどのような恩恵を受けられるのだろうか?
まず、GPUの性能向上により、「AAAタイトル」と呼ばれる最新技術が採用された3Dゲームが、先に紹介したモバイル製品でもプレイできるようになる。第11世代Coreに内蔵されている「Iris Xe Graphics」は、従来の外付GPUのローエンド版に匹敵する性能を備えている。Intelが公開したベンチマークの結果によると、AAAタイトルで30fpsのフレームレートを実現し、タイトルによっては60fpsでプレイできる。
プロゲーマーなどがプレイするにはやや力不足だが、従来の薄型ノートではAAAタイトルはほぼプレイ不可能だったことを考えれば、カジュアルにゲームしたいユーザーには大歓迎だろう。
ゲームだけではない。このコロナ禍において多くのビジネスユーザーに利用されているZoomやTeamsなどのビデオ会議ソフトは、CPUに大きな負荷をかける。ビデオ会議ではそれらのソフトに加え、プレゼンテーションソフトや、ブラウザなども同時に使うため、CPUの負荷はさらに高まる。CPUの性能が足りないと、ビデオの品質やフレームレートが低下し、コミュニケーションに影響が出てしまう。
また、ビデオ会議ソフトでは、GPUやNPUを活用し、背景を消したり、音声のノイズ除去を行なったりする機能が追加されつつある。ここでも、高性能なGPUや、NPUの搭載がCPUの負荷低減に役立つ。
ビデオ会議ソフト以外でも、Adobe Photoshop CCなどもGPU/NPUへの対応/最適化を進めており、さまざまな分野で第11世代Coreプロセッサの恩恵が受けられるようになる。
さらに幅が広がるこれからのパソコン
このように、Intelの新プラットフォームを採用した製品は、これまでのように、単純に性能を伸ばしたりするだけではなく、パソコンの新しい使い方をもたらすものだ。モバイルノートは、営業マンが持ち歩いてオフィスアプリを使うだけといった時代は終わり、それ1台でビジネスからゲーム、クリエイティブにまで活用の幅が広がる。メーカーが想定しないような使い方をするユーザーも現われることだろう。
こういった製品が登場する年末から年明けにかけて、パソコン新製品から目が離せない状況が続きそうだ。
[制作協力:インテル]
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