
「芸術は長く、人生は短し」。生前好んだ格言の通り、国境を超えて多くの心をとらえた音楽は、長く愛され続けるだろう。
音楽家の坂本龍一さんが71歳で亡くなった。
がんの闘病中にも「音」を求め続ける歩みは止めなかった。世界に広がる悼む声が、存在の大きさを改めて示す。
1978年に細野晴臣さん、高橋幸宏さんと音楽ユニット「イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)」を結成し、東洋の実験的なサウンドが衝撃を与えた。
名声を確かなものにしたのが映画音楽だ。「戦場のメリークリスマス」で英アカデミー賞作曲賞、「ラストエンペラー」では米アカデミー賞作曲賞などを受けた。
幼いころから作曲を学んだ。バッハやドビュッシーを愛しながらも、西洋音楽に限界を感じ、民族音楽やシンセサイザーなどの電子音楽に引かれていった。
アジアやアフリカの音楽が西洋に及ぼした影響を知った。前衛音楽家のジョン・ケージが偶然性を取り入れた音楽を世に送り出したことも無縁ではない。
権威や既成概念から脱し、自然や環境音まで含めた新たな音を探究する。しなやかな姿勢は、社会的発言と地続きにあるのだろう。
拠点を置いていた米ニューヨークで2001年の同時多発テロを経験後、「非戦」を訴えるようになった。安保法制に反対するデモに参加し、自然保護にも積極的に声を上げてきた。
11年の東日本大震災後には脱原発を掲げた音楽フェスティバルを開催し、若者による「東北ユースオーケストラ」を結成した。
欧米ではアーティストの政治的発言は当たり前だが、日本では批判されることが少なくない。そんな風潮を意に介さず、「職業に関係なく社会・政治に参画するのは民主主義の基本」と語っていた。
昨年にはロシアの侵攻を受けたウクライナのバイオリニストとの共作を発表した。シンプルだが、聴く者の胸を強く揺さぶる。
自身の中から湧き出る音や声に素直に耳を傾けた生涯だった。
混沌(こんとん)とした時代に、世界の危機が続く。坂本さんが音楽と行動を通して発した問いの答えは、まだ見つかっていない。
2023-04-04 17:00:43Z
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