Search

日本の公然の秘密……ジャニー喜多川氏の性的加害 - BBCニュース

日本の公然の秘密……ジャニー喜多川氏の性的加害 - BBCニュース

Kitagawa

画像提供, Getty Images

シャイマ・ハリル、BBC東京特派員

日本有数の芸能事務所を作り上げたジャニーズ事務所の故ジャニー喜多川氏が、所属タレントに性加害を繰り返していたとされる問題で、喜多川氏のめいにあたる藤島ジュリー景子社長は7日、喜多川氏による性加害を初めて認め、社長を辞任したことを明らかにした。

日本国内に衝撃が走ったのか? いや、走らなかった。

それよりむしろ、「みんな知ってたけど、誰も何もしなかった。それがついにおおっぴらになった」という感覚の方が強い。

喜多川氏にはもう何十年も、性的加害の疑惑がつきまとっていた。発言しようとする者は阻止された。芸能界で絶大な権力をもつ巨大な存在と、その帝国が繰り出してくるだろう訴訟の予感が、声を上げようとする人の前に立ちはだかっていたのだ。

加害疑惑の一部はすでに、民事裁判で真実と認められていた。しかし、刑事訴追はされなかった。

<関連記事>

Presentational white space

喜多川氏は、性加害の対象を常に追い求める「プレデター(捕食者)」だった。同時に彼は、スターを生み出すスターメーカーで、Jポップ界の数々のビッグスターにとっては恩師、恩人だった。権力と成功と、何百人もの少年の夢を、彼はずっと握っていたのだ。

日本で芸能界を目指す10代の少年にとっては、これがスターになるための「暗黙の代償」だったという書き方をした記事もある。

BBCが今年3月に放送したドキュメンタリー「J-POPの捕食者:秘められたスキャンダル」で発言した被害者の1人は、「これを我慢しないと売れないから」と周りに言われたと話す。

line

BBC News Japan YouTubeチャンネルで関連動画を見る

line

喜多川氏は自分が育てたタレントたちに恐れられ、あがめられていた。

藤島氏らによる7日の記者会見を受けて、ほとんどの新聞は新社長となった東山紀之氏の写真を一面に掲載した。

「"父"ジャニー氏の性加害」という見出しを掲げた新聞もあった。東山氏はかねて喜多川氏を恩人として語り、「父のよう」に慕ってきたと述べていた。

BBCドキュメンタリーの3月放送後、現在は歌手として活動する元ジャニーズ Jr.のカウアン・オカモト氏が4月、自分も15歳の時に虐待被害にあっていたと公表した。そしてカウアン氏は事務所の謝罪会見翌日の8日、自ら記者会見。その中で、「僕自身はジャニーズ事務所という場についての感謝と、エンターテイメントの夢を見させてくれたジャニー氏を恨みきれない思いは、世間にグルーミングと言われても今でもある」と話した。

<関連記事>

Presentational white space

ジャニー喜多川氏に対する性加害疑惑は何十年も前からあり、日本のマスコミのほとんどは何十年にもわたりその疑惑を調べなかった。

TBSの昼の情報番組ではジャーナリストが、芸能事務所の社内文化を点検するだけでなく、事実上の疑惑隠蔽(いんぺい)につながったマスコミの慣習についても検証する必要があると指摘。なぜメディアがこれに触れてこなかったのか、自問自答しなくてはならないとも話した。

しかし、答えは簡単じゃないかと言えるかもしれない。権力だ。ハーヴィー・ワインスティーン受刑者がハリウッドで権勢を誇っていた当時のこと、強姦罪で有罪となる前のことを思えばいい。

喜多川氏の権力は、事務所の所属タレントだけではなく、そのタレントを積極的に使いたがる放送局、そして番組のスポンサーとなる広告主にも及んだ。マスコミと芸能が密接に絡み合う空間において、決定権を握っていたのは喜多川氏だった。

なぜこの事態がこれほど長いこと、しかもこれほど幅広く続いていたのか。それを理解するには、日本の恥と沈黙の文化も要素となる。

日本では、性的暴力を受けたと女性が発言すれば、その女性が激しい非難と攻撃にさらされることがある。

そこにさらに複雑な要素を何層も重ねていくと、このジャニーズ問題になる。スターになりたくて一生懸命な少年たちが、同性の年長者に気に入られようとする。その同性の年長者がそれを利用して、少年たちに性的加害を繰り返したのだ。

この一連の出来事が日本の芸能界にどう影響するのか、見通しは不透明だ。この国の少年アイドル文化の基礎を築き上げたとされるジャニーズ事務所において、あまりにたくさんの変化が必要とされている。

しかし、「新しいページ」をめくろうとする事務所の第一歩は、今のところあまり芳しいものではない。新社長の東山氏自身が、性加害疑惑を取りざたされている。

記者会見で自分に対する疑惑について東山氏は再三、質問されたが、それに対する答えは、「記憶を呼び起こすのが難しい作業でもあったので、実際したかもしれないし、してないかもしれないというのが本当の気持ち」という内容だった。

そして、藤島氏は社長の立場は退いたものの、代表取締役ではあり続ける。株式も100%保有し続ける。被害者の補償と救済に自らあたるためだという。

そして、ひとつ大事なことは変わらないまま続く。ジャニーズ事務所という名称だ。これには被害者の多くが驚き、落胆した。自分たちが経験したことに照らせば、その加害者の名前を事務所が冠し続けることは自分たちへの侮辱だというのが、多くの被害者の思いだ。

ジャニーズ事務所。英語名は「Johnny and Associates(ジャニーと仲間たち)」。この名前はかつて、日本の芸能界やJポップ・カルチャーそのものを意味するものだったかもしれない。それが今や、日本最大の性的加害スキャンダルを引き起こした加害者の名前を冠する、汚名にまみれたブランドとなってしまった。

Adblock test (Why?)



2023-09-09 04:39:38Z
https://news.google.com/rss/articles/CBMiO2h0dHBzOi8vd3d3LmJiYy5jb20vamFwYW5lc2UvZmVhdHVyZXMtYW5kLWFuYWx5c2lzLTY2NzYwODMx0gE_aHR0cHM6Ly93d3cuYmJjLmNvbS9qYXBhbmVzZS9mZWF0dXJlcy1hbmQtYW5hbHlzaXMtNjY3NjA4MzEuYW1w?oc=5

Bagikan Berita Ini

Related Posts :

0 Response to "日本の公然の秘密……ジャニー喜多川氏の性的加害 - BBCニュース"

Post a Comment

Powered by Blogger.